エルムステークス2026展望|1番人気が10年で1勝、中位人気と札幌巧者を狙うポイント

エルムステークス2026展望|1番人気が10年で1勝、中位人気と札幌巧者を狙うポイント
エルムステークスは「人気」より「北の適性」を見抜きたい

2026年8月8日、札幌競馬場のダート1700メートルで第31回エルムステークス・GIIIが行われます。3歳以上のダート巧者が集まり、発走予定時刻は15時25分。夏の札幌で重賞タイトルを争う一戦です。

今年はルクソールカフェ、ナチュラルライズ、ウェイワードアクト、昨年の覇者ペリエールなど、実績も個性も濃い顔ぶれが登場予定。メンバー表を眺めているだけで予想会議が始まり、気づけばコーヒーが冷めています。競馬ファンにはよくある現象ですね。

しかも、このレースは単純に「一番強そうな馬」を選べば解決するタイプではありません。過去10年で1番人気の勝利はわずか1回。反対に4番人気と5番人気がそれぞれ2勝を挙げており、少し評価を落とした実力馬が堂々と主役になる傾向があります。

では、人気馬が勝ち切れない理由をどう考えればいいのか。そして2026年の有力馬には、どんな強みと課題があるのか。過去の傾向と今年の顔ぶれをつなぎながら、狙いどころを整理していきましょう。

エルムステークスの基本条件

舞台は札幌競馬場のダート1700メートル。別定で行われる3歳以上のオープン重賞です。広いコースで末脚比べをするレースとは違い、小回りへの対応、位置取り、コーナーでの器用さ、流れに乗り続ける集中力が問われます。

2026年エルムステークスの概要
項目 内容
開催日 2026年8月8日
競馬場 札幌競馬場
競走 第31回エルムステークス・GIII
条件 3歳以上・ダート1700メートル
発走予定 15時25分

札幌のダート1700メートルで実績がある馬はもちろん、同じ北海道シリーズの函館ダート1700メートルで好走した馬にも注意が必要です。過去8回の勝ち馬を見ると、2024年の勝ち馬を除く7頭が、同じ年に函館のレースへ出走していました。昨年の覇者ペリエールも、その前走だった大沼ステークスで約2年ぶりの勝利を収めてから本番へ向かっています。

つまり重要なのは、単なる「北海道旅行経験」ではなく、夏の北海道で一度実戦を使われ、その環境と1700メートル戦のリズムに対応していること。人間でも出張初日より二日目のほうが駅の出口を間違えにくいものです。馬を人間扱いするわけではありませんが、現地での経験が強みになる構図は見逃せません。

なぜ1番人気が10年で1勝なのか

札幌のダート直線で伏兵馬が本命馬を外から追い抜く場面
勝ち馬探しでは、上位人気だけでなく中位人気の実力馬にも注目したい。

過去10年で1番人気は1勝。数字だけを見ると、「人気馬には近づくな」という看板を立てたくなりますが、そこまで単純ではありません。

過去10年の3着以内馬30頭のうち、5番人気以内だった馬は19頭です。上位人気勢がまったく走っていないわけではなく、馬券圏内の中心にはきちんといます。ただし、勝ち馬に限ると5番人気以内が7頭で、その内訳では4番人気と5番人気が各2勝。一方、3番人気以内の勝利は合計3回にとどまります。

要するに、人気上位馬は好走しても、別の実力馬に勝ち切られることが多いレースです。「本命馬を全部消す」よりも、「本命馬を軸候補として残しつつ、4番人気や5番人気付近の勝ち切りまで考える」ほうが傾向には合っています。

人気馬が絶対視しにくい三つの背景

  • 小回りへの適性差が出やすい:純粋な能力だけでなく、コーナーで流れに乗れる器用さが結果を左右します。
  • 北海道での実戦経験が効きやすい:函館からの転戦馬など、現地ですでに走っている馬が力を発揮しています。
  • 実績馬にも巻き返し要素がある:強敵相手に敗れて人気を落とした馬や、条件替わりで良さが戻る馬が参戦します。

こうした条件では、前走着順だけを見て序列を作ると判断を誤りがちです。前走の相手、距離、芝かダートか、コース形態、斤量まで分けて考える必要があります。着順だけで予想が終われば楽なのですが、競馬の神様はそんな時短機能を実装してくれません。

好走馬に共通する年齢と近走成績

人気以外では、年齢と直近の状態が分かりやすい手がかりになります。

過去10年の連対馬20頭のうち16頭、3着以内馬30頭のうち20頭を4歳馬と5歳馬が占めています。充実期にある比較的若い馬を高く評価したいレースです。今年の有力候補でも、4歳のルクソールカフェとナチュラルライズ、5歳のテーオーパスワードとレヴォントゥレットがこの範囲に入ります。

ただし、6歳以上だから即座に割り引くのは早計です。昨年の勝ち馬ペリエールは6歳で連覇を狙い、ウェイワードアクトも6歳ながら前走で圧巻の内容を披露しています。ヴァルツァーシャルには7歳でも鋭い末脚があります。年齢傾向は強いヒントですが、馬柱に赤い退場印を押すための規則ではありません。

前走成績にも明確な傾向があります。過去10年の3着以内馬30頭中23頭は、前走で4着以内でした。直近で上位に入っていた馬は、ここでも好走する可能性が高いと考えられます。

この条件に素直に合うのが、前走を圧勝したウェイワードアクト、近2走で連続3着のヒルノハンブルク、近走がしぶといレヴォントゥレットなどです。一方、近走着順が振るわない馬を見る際には、戦ってきた相手や条件変更を丁寧に確認する必要があります。ナチュラルライズやルクソールカフェは、まさに数字の奥を読みたい存在です。

ルクソールカフェは得意のダートで反撃へ

実績上位として注目されるのが、4歳馬ルクソールカフェです。前走では初めて芝に挑み、GI安田記念で11着。後方からの厳しい競馬になりましたが、上がり3ハロンは出走馬中4番目に速い33秒2でした。

今回は実績のあるダートへ戻ります。武蔵野ステークスでは、のちにダートGIを2勝したコスタノヴァを破っており、ダートで示した能力は高く評価できます。芝挑戦の結果だけで人気が落ちるなら、むしろ馬券的には気になる場面です。畑違いの仕事を一度したからといって、本職の腕まで忘れるわけではありません。

鞍上は岩田望来騎手を予定。課題になるのは、札幌の小回りでどの位置を取り、持っている能力を出し切れるかです。広い舞台の実績だけで決めつけず、枠順と展開を合わせて判断したいところでしょう。

ナチュラルライズ、思い出の札幌で巻き返せるか

昨年のダート2冠馬ナチュラルライズも、今回の大きな焦点です。近4戦では結果が出ていませんが、いずれもGI級の強敵がそろう戦いでした。今回は相手関係が緩和され、地力で見劣る存在ではありません。

何より心強いのが札幌ダート1700メートルへの適性です。2024年夏の新馬戦では、2着馬に6馬身差をつけて圧勝しました。小回り向きの器用さを持ち、舞台との相性はすでに結果で示しています。

8月1日に札幌へ入り、滞在競馬で本番へ。気性面に難しさがあるだけに、輸送の負担を抑えて現地で調整できることは好材料です。前走では控える競馬も経験し、精神面でも少しずつ成長しています。

伊藤圭三調教師は、さまざまな経験を積ませてきたこと、状態が良いから札幌へ連れてきたことを説明し、馬場適性にも手応えを示しています。鞍上は横山武史騎手を予定。近走の着順だけで評価を下げると、札幌巧者の反撃を見逃すかもしれません。

ウェイワードアクトは勢いと1700メートル適性が魅力

北海道の小回りダートで後続を引き離して逃げる競走馬
前走で見せた先行力と小回り1700メートルへの対応は大きな強み。

近走の勢いならウェイワードアクトです。初めて北海道シリーズへ参戦した前走のマリーンステークスでは、トップハンデを背負いながら逃げ、3馬身半差をつけて快勝しました。

それまではマイル以下を中心に使われてきましたが、ローカルの1700メートルで従来以上の強さを披露。函館と札幌でコース形態が完全に同じというわけではないものの、小回りのダート1700メートルを克服した事実は大きな武器です。

前走4着以内という過去の好走条件にも合い、北海道で実戦を経験した馬が強いという流れにも乗っています。逃げる形になれば展開の目標にされる可能性はありますが、それを承知でも中心候補に置きたくなる内容でした。重賞初制覇へ向け、勢いは十分です。

連覇を狙うペリエールと侮れない実力馬

一方、話題を移すと、昨年の覇者ペリエールも当然ながら軽視できません。昨年は前走の大沼ステークスで約2年ぶりの勝利を挙げ、その勢いをつなげてエルムステークスを制しました。札幌ダート1700メートルへの適性は、優勝という一番分かりやすい形で証明済みです。

6歳という年齢は4、5歳優勢の傾向から外れますが、コース適性は年齢だけでは消えません。連覇を阻む新勢力がそろった今年、経験値でどこまで対抗できるかが見どころになります。

ほかにも、前走内容が強かった5歳馬テーオーパスワードは松山弘平騎手とのコンビを予定。近2走でしぶとさを見せている5歳馬レヴォントゥレット、鋭い末脚を持つ7歳馬ヴァルツァーシャルも展開次第で浮上します。

先行馬が多く流れが厳しくなれば差し脚が生き、互いにけん制してペースが落ち着けば前の馬が粘る。名前を並べるだけでも展開の分岐が多く、予想する側の脳内ではすでに何度もレースが開催されます。もちろん脳内レースの払戻金はゼロ円です。

ヒルノハンブルクは集中力がカギ

続いて注目したいのが、4歳馬ヒルノハンブルクです。大沼ステークス、マリーンステークスで2戦連続3着。函館のダート1700メートルで安定した成績を残しており、前走4着以内、4歳馬、北海道での実戦経験という複数の好走条件を満たします。

中1週、中2週での転戦となりますが、8月1日には函館のウッドコースで5ハロン71秒9、ラスト1ハロン12秒4を記録。陣営は元気があり、疲れもなさそうだと状態を見ています。

ポイントは気性面です。荻野助手は、集中力が途中で途切れるところがあり、真面目に走れるかどうかが重要だと分析しています。これは能力を疑う話ではなく、持っている力を最初から最後まで発揮できるかという課題です。

2戦連続3着という安定感がありながら、さらに上へ行ける余地も残している存在。本番で集中して走り切れれば、重賞でも上位争いに加わる可能性があります。

2026年の有力馬を条件別に整理

主な注目馬と評価材料
馬名 年齢 主な評価材料 注目点
ルクソールカフェ 4歳 ダート重賞実績、武蔵野Sで実力馬を撃破 芝から得意のダートへ戻る
ナチュラルライズ 4歳 昨年のダート2冠、札幌の新馬戦を6馬身差で圧勝 滞在効果と精神面の成長
ウェイワードアクト 6歳 マリーンSを3馬身半差で快勝 前走の勢いと小回り1700メートル適性
ペリエール 6歳 昨年のエルムS優勝馬 舞台適性を生かした連覇
ヒルノハンブルク 4歳 函館で2戦連続3着 最後まで集中して走れるか
テーオーパスワード 5歳 前走内容が強い 松山弘平騎手とのコンビ
レヴォントゥレット 5歳 近2走でしぶとい走り 充実期の粘り強さ
ヴァルツァーシャル 7歳 鋭い末脚 展開が差し向きになるか

馬券では4〜6番人気をどう扱うか

エルムステークスの傾向から浮かぶ基本方針は、1番人気を機械的に消すことではありません。1番人気が勝てていなくても、上位人気馬は3着以内には入っています。そこで、軸と勝ち馬候補を少し分けて考える方法が有効です。

  1. まず前走4着以内の馬を確認する
    過去10年の3着以内馬30頭中23頭が該当します。近走の状態を測る最初の物差しになります。
  2. 4歳馬と5歳馬を優先する
    連対馬20頭中16頭がこの年齢層です。人気が中位でも、充実期にある馬は評価を落としすぎないことが大切です。
  3. 函館を含む北海道での実戦を重視する
    夏の北海道で使われた馬、とりわけダート1700メートルで内容を示した馬は要注意です。
  4. 札幌巧者の巻き返しを拾う
    近走着順が悪くても、相手がGI級だった馬や、得意条件へ戻る馬は別枠で考えます。
  5. 4〜6番人気付近を勝ち馬候補に加える
    4番人気と5番人気が各2勝。6番人気以下の台頭も想定し、中位人気を相手扱いだけで終わらせない視点が必要です。

今年なら、前走を圧勝したウェイワードアクトは近走成績と北海道経験が強み。ヒルノハンブルクは年齢、前走着順、函館経験がそろいます。ルクソールカフェとナチュラルライズは、前走着順よりもダート実績や札幌適性を重視したいタイプです。

最終的な人気順はオッズが固まるまで分かりませんが、能力のある馬が4〜6番人気付近に収まるなら勝ち切りまで検討したいところ。逆に1番人気になった馬は、「強いから」だけで決めず、小回り適性と近走内容をもう一度点検するのがよさそうです。

枠順と展開で最後のひと押しを

札幌の小回りダートで先行争いを繰り広げる馬群
先行争いの激しさによって、前残りか差し台頭かが変わる。

データで候補を絞った後は、枠順と展開が仕上げになります。ウェイワードアクトが前走同様に先手を取るのか、ほかの先行馬が競りかけるのか。ナチュラルライズが控える競馬の経験をどう生かすのか。ルクソールカフェがどの位置から運ぶのかによって、レースの表情は大きく変わります。

先行争いが激しくなれば、ヴァルツァーシャルのような末脚型にも出番が生まれます。流れが落ち着けば、ウェイワードアクトや小回りで器用に運べる馬が有利。ヒルノハンブルクにとっては、道中で集中を保ちやすい形になるかも重要でしょう。

予想では、枠順が出る前に一頭へ決め打ちしすぎないことも大切です。先に結論を決めると、あとから見た情報を全部その馬に都合よく解釈してしまいます。競馬ファンの脳は、ときどき名調教師より先に名脚本家になります。そこは少しだけ冷静に。

まとめ|実績、近況、北海道適性を重ねて考える

2026年のエルムステークスは、実績上位のルクソールカフェ、思い出の札幌で復活を狙うナチュラルライズ、前走圧勝のウェイワードアクト、連覇がかかるペリエールを中心に、見応えのある一戦となりそうです。

過去10年では1番人気が1勝にとどまり、4番人気と5番人気が各2勝。3着以内馬30頭中19頭は5番人気以内なので上位人気を無視する必要はありませんが、勝ち馬探しでは中位人気にも大きく目を向けるべきレースです。

さらに、4歳馬と5歳馬、前走4着以内、函館を含む北海道での実戦経験という三つの条件が重要になります。ただし、ナチュラルライズやルクソールカフェのように、強い相手との戦いや条件変更によって近走着順だけでは測れない馬もいます。

人気は能力の通知表ではなく、多くの人の予想が集まった数字にすぎません。札幌ダート1700メートルへの適性、現在の調子、近走の相手関係、展開を一枚ずつ重ねれば、4〜6番人気付近に潜む勝ち馬候補が見えてきます。北の大地で先頭のゴールを駆け抜けるのは実績馬か、勢いのある馬か、それとも絶妙に人気を落とした伏兵か。8月8日の答え合わせを楽しみに待ちましょう。